海外販売の拡大を目指すあなたへ。しかし、その前に立ちはだかるのがVAT(付加価値税)という壁。
複雑な制度、煩雑な手続き…、一体どうすれば?
この記事では、越境EC事業者であるあなたが抱えるVATに関する疑問を解消し、スムーズな海外販売を実現するための具体的な対策を解説します。
税務リスクを回避し、顧客からの信頼を獲得し、海外市場での競争力を高めるためのヒントが満載です。
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VATとは?販売者にとって超重要!なぜなら…
VATとは?販売者にとって超重要!なぜなら…
海外販売で避けて通れないのがVAT(付加価値税)。日本の消費税と似ていますが、決定的な違いは「誰が払うのか」です。
- 日本の消費税: 商品やサービスを購入する、私たち消費者が負担します。
- 海外のVAT: 基本的には販売者であるあなたが負担します。(特定の条件の場合には購入者が払うこともある)
しかし、あなたがVAT登録を怠ると、お客様へ予期せぬ請求がいってしまう可能性があります。
これでは、お客様は驚きと不信感を抱き、購入を諦めてしまうかもしれません。
顧客満足度を維持し、トラブルを避けるためにも、VATの知識を身につけておくことは非常に重要です。
越境ECにおけるVATの仕組み:なぜEUと英国が特に重要なのか?
越境ECで商品を販売する際、VATは避けて通れない課題です。
特に、EUと英国のVAT制度は、販売金額に関わらず、越境EC事業者にとって非常に重要となります。
なぜなら、これらの地域では、たとえ越境ECモール(プラットフォーム)を利用していても、販売者自身にVAT登録や納税義務が生じる場合があるからです。
これは、EUと英国が越境EC事業者に対して厳格なVATの遵守義務を課しているためであり、米国など他の地域とは異なり、プラットフォームが税金の代行徴収を行うケースが少ないためです。
一方、アメリカなど他の地域では、AmazonやeBayなどのプラットフォームがVATに相当する税金を代行徴収してくれるケースが多く、販売者は個別にVAT対応を行う必要性が低い傾向にあります。
米国などの他の地域では、プラットフォームが税金の代行徴収を行うケースが多いため、販売者の負担が軽減されることが一般的です。
そのため、この記事では、特にEUと英国のVAT制度に焦点を当て、詳しく解説していきます。
EUにおけるVATの仕組みと変更点
EUでは、2021年7月以降、越境EC事業者にとって重要なVATルール変更が行われました。
これらの変更点を理解することは、EU市場へのスムーズな参入と、法的リスクの回避に繋がります。
変更点1:輸入される全ての商品にVATが適用
従来は22ユーロ以下の輸入品はVAT免税でしたが、新ルールでは全ての商品にVATが課税されるようになりました。
つまり、たとえ少額商品であっても、EUに輸入される際にはVATの納税が必要となります。
変更点2:150ユーロ以下の商品の遠隔販売にはIOSS制度が導入
150ユーロ以下の商品の遠隔販売(お客様が直接海外の販売者から商品を購入する形態)には、IOSS(Import One-Stop Shop)制度が導入されました。
IOSSを利用することで、販売者はEU域内の複数の国への販売であっても、一括してVAT申告・納税を行うことができます。
IOSSについての詳細は後ほど詳しく解説します。
150ユーロ以上の商品には輸入VATが発生
150ユーロを超える商品の場合は、輸入時に購入者が輸入VATを支払う必要があります。
この輸入VATは、商品がEU域内に入る際に課される消費税のようなものです。
これらの変更により、EUへの輸出を行う事業者は、たとえ少額商品であってもVAT対応が必要となり、手続きが煩雑になる可能性があります。
しかし、IOSS制度を活用することで、VAT手続きを簡素化し、顧客体験を向上させることも可能です。
輸入VATとは:購入者が輸入VATを支払う必要があります。商品が到着した際、配送業者や郵便局が輸入VATの支払いを代行し、その後消費者に請求することが一般的です。また、プラットフォームや物流業者が、輸入VATを代わりに徴収して支払うサービスを提供している場合、購入者が輸入VATを間接的に支払う形となります。
EUにおけるVAT登録の必要性
EUでは、年間売上高が1万ユーロを超える場合はVAT登録が義務付けられていますが、1万ユーロ以下の場合でも、継続的な販売とみなされればVAT登録が必要となる可能性があります。
販売頻度と顧客数について、最終的な判断は現地の税務当局が行います。明確な基準は公表されていませんが、販売回数、顧客数、販売期間、販売金額、マーケティング活動などが考慮される可能性があります。
EUの場合、販売頻度や顧客数に加えて、以下の要素も考慮される可能性があります。
- 在庫の保管場所: EU域内に在庫を保管している場合は、VAT登録が必要となる場合があります。
- EU域内での事業活動: EU域内で事業活動を行っている、または行う予定がある場合は、VAT登録が必要となる可能性があります。
- EU加盟国への配送: EU加盟国への配送サービスを提供している場合、継続的な販売とみなされる可能性があります。
EUのVAT登録の必要性についても、明確な基準は公表されていません。
そのため、判断に迷う場合は、現地の税務当局またはVATに詳しい専門家に相談することをお勧めします。
英国におけるVATの仕組み
英国はEU離脱後、独自のVAT制度を導入しました。主なポイントは次の通りです。
- 135ポンド以下の商品の遠隔販売には、英国のVAT登録が必要: これはEUの新VAT規則と同様ですが、閾値が異なります。
- 135ポンドを超える商品の輸入には、輸入VATが課税: これは従来のEUの仕組みと同様です。
- 年間売上高が85,000ポンドを超える場合、閾値を超える前からVAT登録が必要
- 年間売上高が85,000ポンド以下の場合でも、継続的にイギリスへの販売を行う場合はVAT登録が必要となる可能性がある
輸入VATとは:購入者が輸入VATを支払う必要があります。商品が到着した際、配送業者や郵便局が輸入VATの支払いを代行し、その後消費者に請求することが一般的です。また、プラットフォームや物流業者が、輸入VATを代わりに徴収して支払うサービスを提供している場合、購入者が輸入VATを間接的に支払う形となります。
英国への販売を行う事業者は、これらのルールを理解し、適切なVAT対応を行う必要があります。
特に、135ポンド以下の商品を販売する場合は、英国でのVAT登録が必須となるため注意が必要です。
また、たとえ年間売上高が85,000ポンド以下であっても、継続的にイギリスへの販売を行う場合は、VAT登録が必要となる可能性があります。
販売頻度と顧客数について、最終的な判断はイギリスの税務当局(HMRC)が行います。
HMRCは、事業者の販売活動や顧客情報などを総合的に評価し、VAT登録が必要かどうかを判断します。
明確な基準は公表されていませんが、以下のような要素が考慮される可能性があります。
- 販売回数
- 顧客数
- 販売期間
- 販売金額
- マーケティング活動
HMRCは、これらの要素を総合的に判断し、VAT登録が必要かどうかを決定します。
もし、VAT登録が必要かどうか判断に迷う場合は、HMRCに直接問い合わせるか、VAT制度に詳しい税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
その他の国のVAT制度
アメリカ、中国、オーストラリアなど、その他の主要な越境EC市場でもVATに相当する税金が存在します。
それぞれの国の制度を理解し、適切に対応する必要があります。
たとえば、アメリカでは州ごとに異なるSales Tax(売上税)が適用されており、VATとは異なる仕組みであることに注意が必要です。
しかし、AmazonやeBayなどのプラットフォームがVATに相当する税金を代行徴収してくれるケースが多く、販売者は個別にVAT対応を行う必要性が低い傾向にありますので販売予定の絵l越境ECモール(プラットフォーム)に事前に確認しておきましょう。
越境EC事業者にとってのVAT対応:具体的な手続きと戦略を理解する
海外販売を成功させるためには、VATへの適切な対応が不可欠です。
しかし、VATの納税義務が生じるタイミングや場所、VAT登録の必要性など、多くの疑問が生じることでしょう。
ここでは、越境EC事業者として知っておくべきVAT対応について、具体的な手続きと戦略を詳しく解説します。
いつ、どこでVATを支払うべきか?
VATの納税義務は、販売する商品、販売先、そして販売方法によって異なります。
- EU域内での販売:原則として顧客の所在国でVATを納税します。年間売上高が1万ユーロを超える場合は、顧客の所在国でのVAT登録が必要になります。
- EU域外からの輸入:商品は輸入時に輸入VATが課税されます。ただし、IOSSを利用すれば、手続きを簡素化し、顧客体験を向上させることができます。
VAT登録が必要なケース
VAT登録が必要となる主なケースは以下の通りです。
- EU域内での一定以上の売上:国によって基準額は異なりますが、年間売上高が1万ユーロを超える場合は、VAT登録が必要となります。
- 在庫をEU域内に保有する場合:EU域内に倉庫などを保有し、そこから商品を発送する場合は、在庫を保有する国でのVAT登録が必要になります。
- イギリスへの遠隔販売:年間売上高が85,000ポンドを超える場合、または継続的にイギリスへの販売を行う場合は、イギリスでのVAT登録が必要になります。
VAT申告と納税の手続き
VAT登録後は、定期的な申告と納税が求められます。
- 申告頻度と手続き:国によって申告の頻度や手続きが異なります。
- 税理士や代行業者への依頼:複雑な手続きをスムーズに進めるため、専門家への依頼をお勧めします。
VAT登録のメリットとデメリット
VAT登録には、メリットとデメリットの両方があります。
メリット
- スムーズな取引:顧客の所在国でVATを納税できるため、通関手続きがスムーズになり、顧客満足度向上に繋がります。
- 顧客からの信頼向上:VATを含めた価格表示は、透明性の高い取引であることを示し、顧客からの信頼獲得に繋がります。
- 販路拡大:VAT登録をしていないと解説できないEUやイギリスのプラットフォームがあります。
- VAT還付の手続きがスムーズ:VAT申告と同時に還付請求を行うことができる為
デメリット
- 手続きの煩雑さ:VAT登録や申告には、煩雑な手続きが必要です。
- 費用負担:VAT登録や申告に高額な費用が発生することがあります。
- 管理の負担:各国のVAT制度を理解し、適切に管理する必要があります。(その為、専門家は必須です)
- 維持費用負担:VAT登録後に販売しなくても維持費用が発生します。(専門家への報酬等)
EU・英国への販売におけるVAT登録すべきかどうかの判断基準:フローチャートで簡単チェック!
EU域内
- EU域内での年間売上高は1万ユーロを超えるか?
- Yes: VAT登録が必要
- No: 次の質問へ
- 150ユーロを超える商品を販売するか?
- Yes: VAT登録が必要
- No: 次の質問へ
- EU域内に在庫を保有するか?
- Yes: VAT登録が必要
- No: 次の質問へ
- 販売頻度や顧客数などから、継続的な経済活動とみなされる可能性があるか?(たまたま売れたのでは無い)
- Yes: VAT登録を検討する(専門家への相談推奨)
- No: IOSSへの登録で対応可能
英国(イギリス)
- イギリスへの年間売上高は85,000ポンドを超えるか?
- Yes: VAT登録が必要
- No: 次の質問へ
- 135ポンドを超える商品を販売するか?
- Yes: 輸入VATが発生(顧客が支払う)
- No: 次の質問へ
- 販売頻度や顧客数などから、継続的な経済活動とみなされる可能性があるか?
- Yes: VAT登録を検討する(専門家への相談推奨)
- No: VAT登録は不要(ただし、税務当局の判断によっては必要となる場合もある)
上記は一般的な情報であり、具体的な状況によっては異なる場合があります。VAT登録の必要性については、税理士や専門家への相談を強くお勧めします。また、VAT制度は変更される可能性があるため、最新情報を確認するようにしましょう。
IOSS制度の活用
IOSS制度を活用すれば、VAT手続きを簡素化できます。
IOSSは、EUへの150ユーロ以下の商品の遠隔販売におけるVAT手続きを簡素化する制度です。
IOSSを利用することで、上述した輸入時のVAT納税が不要となり、顧客への請求もスムーズになります。
EUへの150ユーロ以下の商品の遠隔販売を行う場合は、IOSSの活用を検討しましょう。
IOSSとは?
- Import One-Stop Shop(輸入ワンストップショップ)の略
- 2021年7月1日導入
- EUへの150ユーロ以下の商品の遠隔販売におけるVAT手続きを簡素化
IOSSのメリット
- 輸入時のVAT納税が不要:顧客は商品購入時にVATを支払うだけで済み、煩雑な手続きが不要になります。
- VAT申告と納税がスムーズ:販売者は、IOSSを通じてまとめてVAT申告と納税を行うことができます。
- 顧客体験の向上:顧客は、追加料金や手続きなしで商品を受け取ることができ、満足度が高まります。
IOSS登録の注意点
- EU加盟国いずれかでの登録が必要
- 定期的なVAT申告と納税が必要(専門家への支払い費用が発生する可能性あり)
- 販売価格にVATを含める必要がある
- 自社でのIOSS取得はハードルが高い(専門家への支払い費用が発生する可能性あり)
- 2021年7月以降、IOSSの対象となるのは、EU域外の事業者がEU域内の消費者に直接販売する商品に限られます。EU域内の事業者がEU域内の消費者に販売する商品、またはEU域外の事業者がEU域内の事業者に販売する商品(B2B取引)は、IOSSの対象外です。
eBayやAmazonなどプラットフォームが提供するIOSS番号の利用
- プラットフォームによっては、プラットフォームが提供するIOSS番号を利用できる場合があります。
- 利用条件や手続きはプラットフォームによって異なり、手数料が発生する場合もあります。
- 自分でIOSS番号を取得する手間が省けるのはとてもメリット
越境EC物流代行業者を利用する場合のIOSS活用
- 物流代行業者がIOSS登録を代行してくれる場合があります。
- 代行業者を利用することで、VAT手続きの負担を軽減できます。
- 代行手数料やサービス内容を比較検討する必要があります。
- 自分でIOSS番号を取得する場合と比較検討し、最適な方法を選びましょう。
まとめ【フローチャートあり】越境ECでVATトラブルを回避!EU・イギリス向け販売の注意点と対策
越境ECにおけるVATは、複雑で煩雑な手続きが必要ですが、適切に対応することで、海外市場でのビジネスチャンスを拡大できます。
株式会社WADACHIは、越境ECモール販売実績30サイト以上、越境EC輸出配送実績10万件以上、越境EC流通総額67億円以上の実績を持つ、越境EC物流の専門家です。
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免責事項:この記事は、一般的な情報提供を目的としており、税務・法務に関する専門的なアドバイスを提供するものではありません。具体的なVAT対応については、最新のVATに詳しい税理士や専門家にご相談ください